
初陣で手痛い敗北を喫した僕は、だからこそ天地の如くにのめりこんでいました。
複アカは4つ作っており、せっせせっせと農民生活です。
そんな中、南にある大国「摩利支天公国」との摩擦が激しくなってきました。
理由はささいなことですが、資材採取中を攻撃されたとかやりかえされたとかそんなものだった気がします。
こういう行為はタイルキルといって、双方死者はでないのですが、やられるとムカつきます。
基本的には嫌がらせ以外の何者でもないので、マナー違反行為といわれていたりします。
さて、問題は相手盟主のヒステリーにありました。
他の国の人たちも自由に喋れる国家チャット、通称国チャで「ケツロはひどい国です。私たち摩利支天は被害者です。ひどいひどいひどい、皆さんどう思いますか!」
と被害者ぶって叫びまくるのです。
我々の連盟では国チャでダサいことをするのは禁止なので、まず「ケツロ」連盟内で会議です。
「一体なにが起こってるの? タイキルしたのは誰?」
リーダーがそう聞くと、
「僕です。でもあっちのメンバーが先にやってきたからやりかえしたんですけど」
と1人のメンバーが答えます。
「ふむふむ、じゃああっちが悪いじゃない。それにそもそも戦争ゲームで、やっちゃいけないことなんてないからね。まだ協定も結んでないし」
どうやら摩利支天の1人のメンバーが暴れ回っている模様で、そいつはタイキルされかえした時だけ摩利支天の盟主「摩利」に報告しているようです。
「じゃあ国チャ行ってくるわ」
そういいリーダーは国チャで舌戦を繰り広げます。
「ちょっと事実確認してから喋ろうと思ってたから黙ってたんだけど、あんたもキャンキャン吠えてないで盟主なんだからちゃんと確認してから訴えなさいよ。大体個人チャットするとか他にも方法あるでしょうに、ダサいわ」
「何を言っているんですか? マナー違反はそっちでしょう?」
「マナー? 戦争ゲームで何を言ってるのよ。タイキルもそういうシステムが搭載されているんだから、別に非難される筋合いはないわ」
「本性がでましたね。タイキルが悪というのはほとんどの人の見解だと思います。ルールだから何をやってもいいというのは違うと思いますけど」
「百歩譲ってタイキルが悪でやっちゃだめだとするじゃない? でもね、そもそもタイキルしまくってるのはあんたの国の〇〇ってやつなんですけど?」
「え、〇〇さんはタイキルされたって……」
「ちゃんと戦闘結果で確認した? 私は全部見せてもらったけど、まず仕掛けてくるのは〇〇よ。タイキルで非難される筋合いはないという考え方は変わらないけど、うちはタイキル禁止にしてるのよね。つまんないし余計な摩擦を避けるためにね。その代わりやられた場合はやりかえしてもいいってことにしてるのよ」
ちなみにケツロでタイキルを禁止などしていません。あとで聞いたらこれはリーダーのブラフでしたね。
もちろんこれ以降は言ってしまった手前タイキルは禁止になりました。
ここで摩利からのチャットが途切れます。
自分の連盟内で事の真偽を確認しているのでしょう。
その間に他の連盟からも声があがります。
「おれもそいつにやられたわ」「それでキレるっておかしくね?」
などなど。
数分待つと摩利が帰ってきます。
「リーダーさん、ケツロの皆さん、全国家の皆様失礼しました。どうやらこちらに非があったみたいです」
摩利が非を認めました。
「でしょ? こちらだって間違いはあるんだから、まずは個人チャットで話しましょうね。こんな風に国チャで罵られたら迷惑だから。うちはともかく戦力の弱い国家は何も言えずに泣き寝入りよ。とにかく〇〇には反省させてね」
「〇〇さんは除名しました」
「へ?」
「除名しました」
「いや、他所様のことに口を出すのはアレだけど、注意くらいでいいんじゃあ?」
「いえ、〇〇さんには責任をとってもらい除名ということになりました。皆さん大変失礼しました。失礼します」
〇〇という人物、まさかの摩利支天を追放です。
国チャは「摩利えげつなwww」「容赦なさすぎww」「〇〇、この後摩利に焼かれるんじゃね?」
と大盛り上がりになりましたとさ。
こういうやらかした〇〇みたいなヤツは煙たがられるので、どこもいれてくれなかったりします。
そして野良でいるところを強者にいたぶられ、引退を迎えることも少なくありません。
摩利支天とはこの後数々の激戦を繰り広げることになります。
がそれはまた別の話。
さて、僕はまだまだ傍観者でありましたが、徐々に力をつけていくことになります。